小さな恋 大きな恋


07


リョーマがやってきて1ヶ月たったころ、クラスメイトとも仲良くなって、たまに休むこともあるが、休日には不二や菊丸、乾らとテニスをし
たりして何事もなく過ごしていた時だった。毎朝国光と一緒に学校へ来ているリョーマだったが、今日はなんだか元気がないように見え
た。ため息ばかりついているのだった。
「ねぇ、手塚。リョーマちゃんどうしたの?」
そんなリョーマを見て、不二と乾は思わず手塚に尋ねた。
「知らん。朝からああなんだ。具合が悪いのかと思って聞いてみたが違うそうだ。」
「じゃあなんだろうな。」
「さあな。リョーマの母親も何も言ってなかったしな。」
倫子は朝、リョーマの具合がちょっと悪いなと思ったら手塚のところへ電話するようにしていた。でも、今日はそれがなかったので手塚
も朝から不思議に思っていたのだった。
「リョーマはなんて言ってるんだ?」
「俺が『なんでそんなにため息ついてるんだ?』と聞いても『なんでもない。』と答えるだけなんだ。」
「そっか。じゃあリョーマちゃんが言ってくれるまで待つしかないね。」
「そうだな。」
「ああ。」


昼休み、昼食を食べ終えた手塚、不二、乾はいつも通り保健室へ行こうとした時、リョーマが手塚に近づいてきた。
「ねぇ、国光。」
「なんだ?」
「今日はお昼休み、他のお友達といる約束してるんだ。だから国光達と一緒に保健室行けないの。」
突然のリョーマの言葉に驚いたがなんとか返事を返した。
「・・・・・そうか、わかった。」
「ん、じゃあね。」
そう言うとリョーマは他の友達のもとへ行ってしまった。
「リョーマちゃんなんだって?」
リョーマが別のところへ行ったのを見て不二が近寄ってきた。
「今日は他の友達といる約束をしているそうだ。だから俺達とは行けないと。」
「えっ?それ本当?」
「ああ。今リョーマ本人が俺に言いに来たからな。」
「そっか。リョーマちゃんだって女の子なんだから女の子といたい時だってあるよね。それじゃあ仕方ないね。折角リョーマちゃんに話聞
こうと思ったのに。」
「乾は?」
「乾は図書室行ってから行くから先に行っててくれって。」
「わかった。」
「リョーマちゃんが行かないとなると英二が残念がるだろうね。」
「だろうな。」
そんな話をしながら2人で教室を出て行った。
そんな2人の後姿をリョーマが見ていたなんて2人は知るはずもなかった。


「えー!おちび来ないのー?!」
保健室にはすでに菊丸がいた。でも、2人の他にリョーマがいないことに気付くと何故リョーマがいないのか尋ねた。2人は今日はリョー
マは他の友達といる約束をしているので来ないことを告げると大声で文句を言った。
「仕方ないでしょ、英二。リョーマちゃんだって他の友達といたい時だってあるんだから。それにリョーマちゃんは女の子なんだから女の
子の友達もいるんだよ。」
「う〜。でもさー。」
「遅くなった。」
英二がうなっているところへ乾が入ってきた。
「あれ?リョーマは?」
と聞くので菊丸に言ったように乾にも説明した。すると乾は、
「それもそうだな。」
と納得したのだった。それを聞いた菊丸がまだ納得できないと言った風に乾に言った。
「乾ー。乾は寂しくないのー!」
「リョーマにはリョーマの付き合いがあるんだ。我慢しろ、英二。」
「ちぇー。」
この時、4人はリョーマもたまには違う友達と付き合いたいと思うのはこの時だけだろうと思っていた。








08


「えっ?今日も?」
「ああ。」
リョーマが昼休み手塚達とではなく違う友達と一緒に過ごすようになって今日で1週間だった。今日は一緒に昼休みいられるだろうと思
っていたのだが、今日も違う友達と一緒にいると朝言われたのだった。
「今日の朝はどうだったのさ?」
「今日も少し元気がなかったと思う。でも1週間前よりはましだと思う。」
「そう。」
不二は毎日手塚に朝のリョーマの様子を聞いていたのだった。1週間前はため息ばかりついて元気がなかったが日にちがたつにつれ
て少しずつため息をつく回数が減っていた。それでもため息はついていたが。
「君達最近一緒にいるのって朝一緒に行ってる時だけじゃないの?」
「・・・・・。」
1週間前からリョーマは帰りもその友達達と一緒に帰っているのだった。それどころか休日もその子達と一緒にいるようだった。
「手塚、気付いてる?君、段々眉間の皺が深くなっていってるよ。」
「余計なお世話だ。」
「君の顔が怖くてリョーマちゃんが近づけないんじゃないの?」
「・・・・・・・・・・・・。」
不二は冗談のつもりで言ったが、手塚は本気にとってしまい本気で悩み始めた。
「冗談だよ。」
「・・・そうか。」
「そうだよ。」
疲れるなぁと思いながら今日も2人で保健室へ向かうのだった。先に行ってるであろう友人をどうなだめようか考えながら。


「えー!!!今日もぉ?!??!?!」
今日もリョーマが来ないことを菊丸に告げるとまたしても文句がでた。
「英二、いい加減にしなよ。」
毎日毎日菊丸の文句を聞いていた不二もいい加減キレそうになっていた。
「だ、だって、不二ぃ。おちびいないとつまんないんだもん!俺はクラス違うからおちびと会えないし!」
「仕方ないだろ。じゃあ、英二が今日の放課後リョーマちゃんとこ行って明日一緒にお昼休み一緒に保健室行こうよって誘ってきなよ。」
「・・・わかった!!俺、言いに行くよ!」
「無理やりはだめだからね。」
「わかってるにゃ!」
「それならいいけど。リョーマちゃんが無理って言ったらあきらめるんだよ。」
「わかってるってば!!不二は心配性だにゃ。」
「英二の日ごろに行いが悪いからだよ。」
「うるさいにゃぁ!!」
そして菊丸で遊ぶ不二だった。



放課後

「おっちびー!」
「英二?」
昼休みに不二に言われたことを実行に移すために放課後リョーマ達のクラスへやってきた菊丸は帰り支度をしているリョーマのもとへ
やってきた。
「どうしたの?」
突然やってきた菊丸の意図がわからず首を傾げているリョーマに菊丸は笑顔で言った。
「おちびちゃん、明日の昼休み一緒に保健室行こーよー。」
「えっ。」
菊丸の言葉にリョーマは一瞬理解ができなくてその後困ったように視線をさ迷わせた。そしてリョーマが口を開こうとした時、リョーマを
呼ぶ声がした。
「リョーマぁ!早く帰ろうー!」
「あ、うん!ちょっと待って!今行く!」
友人の声にリョーマが返事をするとリョーマは慌てて鞄を持ち、そして菊丸に申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、英二。私、しばらくあの子達と一緒にいるから。じゃあ、またね。」
そう言ってリョーマは小走りで友人達のもとへ行ってしまった。唖然としている菊丸を残して。
「英二、これであきらめなよ。リョーマちゃんはあの子達といるのが楽しいんだよ。」
「不二ぃ、おちびにふられたよー。」
「はいはい、かわいそうにね。」
不二はぽんぽんと菊丸の頭をたたいて、手塚と乾とともに学校を後にした。